16年度税制改正大綱を決定 自公、法人税は29.97%に  
自民、公明両党は16日午後の与党政策責任者会議で、2016年度税制改正大綱を決定した。法人実効税率を現在の32.11%から16年度に29.97%に下げる。14年度から3年連続の引き下げで、企業に投資や賃上げを促す。(日経新聞2015/12/16朝刊)

2015年度税制改正大綱を受け、日経新聞にて、「法人実効税率を現在の32.11%から16年度に29.97%に下げる」と報道する記事がありました。
上記の報道記事の通り、法人実効税率は毎年引き下げられており、税効果会計を適用する際に、どの税率を使うべきか変化に敏感でなければ迷ってしまいます。

東京23区内の実効税率(12月決算を例として)
Items 2016年12月期 2017年12月期 2018年12月期
外形標準課税適用法人 33.06% 30.86% 30.86%
中小法人-標準税率 34.33% 33.80% 33.80%
中小法人-超過税率 35.36% 34.81% 34.81%
2017年3月期・2017年12月決算会社の実効税率は30.86%と計算されます。正確な表現を使いますと、本社の所在地と会社の資本金の額によって、特例があったりして、それより低いこともありますが、「東京に本社を置く大企業の実効税率」が、30.86%となります。

過去数年に渡り、税率の改正があり、ネット上で情報を検索しても、専門用語で記載されていることが多く、30.86%は、そもそもどうやって計算されるのかということを分かりやすく解説した記事があまりないような印象をもっています。ですので、今回は、日本の実効税率30.86%は、そもそも何なのかをかみ砕いて説明していきます。

四則演算しか使いませんので、簡単にご理解していただけると思いますし、法人税等の概要を理解していいただくマメ知識としてお使いいただければと思います。

実効税率とは?

まずは、定義的なところから。実効税率とは、会社が、利益の額に対して負担する税金の額の割合をいいます。具体例を挙げますと、会社の利益が、1,000円で、その利益に対して、300円の税金を払わなければいけないのであれば、実効税率は、30%ということになります。
ただ、この定義は若干正確性に欠けていて、より正確には、会社の「税務上の利益の額」に対する税金額という定義になります。「税務上の利益」といった瞬間、難易度がぐっと上がった感じがしますが、会計と税務上の利益の間には、差があり、税理士などが専門知識を使って調整していると覚えておいていただければ十分です。

日本の法人が負担する税金

実効税率が対象とする税金は、法人の利益にかかる税金です。ですので、固定資産税などは対象ではありません。あくまで、利益に対して負担しなければならない税金だけを議論しているのです。
簡単に整理すると、日本の法人の利益にかかる税金は、以下の5種類です。
1)法人税  (税率 23.4%)
2)地方法人税 (税率 4.4%)
3)住民税 (税率 16.3%)
4)事業税 (税率 0.88%)
5)地方法人特別税 (税率 2.9%)
この5種類の税金の税率をもとに、実効税率30.86%がどのように計算されていくか見ていきましょう。

実効税率の計算式

実効税率を計算する算式は、一般に以下のように定義されています。

taxrate

そして、実際の税率を代入して計算してみると以下のようになります。

taxrate2

なぜ、単純合算じゃないのか?(1+0.88%+2.9%)で割る意味は?と疑問を持たれるかもしれませんが、このように難しくしているのは、事業税+地方法人特別税という税金が持つ特性によるものです。
簡単にいうと、事業税+地方法人特別税は、他の「法人税」「住民税」と違い、税金上の利益を減らすことができるため、事業税+地方法人特別税の減税効果を反映した税率を計算しなければならないからです。

この算式だけを暗記している方も、多くいらっしゃますが、もう一歩踏み込んで、税金がどのように計算されているかが、見えれば、この式の意味もより深く理解できるのではないかと思います。
次のセクションでは、利益が10,000だったときの各税金額の計算プロセスをみて、本当に38.01%の税金がかかるのかを見ていきたいと思います。

税金計算のシュミレーション

以下の表が、日本の法人税の計算プロセスになります。緑色の部分だけに注目していただくと、一番上の利益が、10,000に対して、一番下の税金合計額が、3,211となり。税金/利益を計算すると、38.01%になります。
taxcal
具体的に計算方法をみていきますと、税金の計算は、税金上の利益の額からスタートします。まず、利益を10,000と仮定してみます。(税務上、会計上の利益は同じと仮定)

その下に、事業税+地方法人特別税566とあります。これは、さきほど少し触れましたが、事業税+地方法人特別税は、税金計算の基礎となる利益から控除することができるので、まず最初に、控除しておきます。事業税+地方法人特別税364の計算方法は、循環計算になるため、エクセル計算のゴールシークを使い、Dの事業税と同じ金額を設定することによって算出することができます。(実務上は、支払額を入れるので、このような計算は不要です。)

②税金上の利益(事業税控除後)9,636は、10,000-364で計算できます。この後の税金計算は、9,636をベースにして行っていきます。まず、「法人税」「地方法人税」「事業税」「地方法人特別税」は、この9,636に税率をかけることで算出できます。また、「住民税」は、法人税額に16.30%を乗じて算出します。

これらの税金の額を合計すると、3,086となり、利益10,000の30.86%に相当する額になっています。

いかがだったでしょうか?事業税+地方法人特別税の部分が分かりにくかったかもしれませんが、日本の法人税等の計算は、エッセンスだけを抽出すれば、非常にシンプルなものです。

東京23区内の実効税率(12月決算を例として)
Items 2016年12月期 2017年12月期 2018年12月期
外形標準課税適用法人 33.06% 30.86% 30.86%
中小法人-標準税率 34.33% 33.80% 33.80%
中小法人-超過税率 35.36% 34.81% 34.81%
2016年12月期と2017年12月期の実効税率の具体的な計算方法

taxcal